録音のカタチ
バイオハザードシリーズの主なる舞台はアメリカなので、キャラクターは英語をしゃべります。当然、各キャラクターの英語ボイスの録音が必要になってきます。
英語ボイスの録音事情ですが、かつては日本で声優さんを集めて録音したり、またその昔は(バイオではありませんが)開発スタッフが声を担当した時代もありました。しかしゲーム機の表現力が上がり、商品のグローバル化が進むと、ボイスの面でも高いクオリティが必要になってきます。
バイオハザードシリーズは今まで海外での録音を行い、クオリティが評価されてきたタイトルです。
今回も海外での録音を行いました。
録音は何回にも分けて行ったのですが、私は3月にアメリカ・ロサンゼルスでの録音に立会いました。
ロサンゼルスは晴れの日が多く、快適なのですが、一日中スタジオに篭らなければならないので、そこがなかなか苦痛です。また今回はできるだけ旧作と同じ声優さんを使う方針でしたので、一部のキャストは遠隔地と通信で結んでというカタチを取りました。クレア役のアリソン・コートさん、エイダ役のサリー・カヒルさんはカナダの声優さんなのです。この通信による録音は技術の進歩によって成し遂げられたものですが、(今や普通に行われています)マシントラブルも多く、やはりその場に声優さんがいるわけではないので、何が起こっているかわからない時はかなりヤキモキさせられます。
その代わりスタジオにはコーヒー、ドリンクを始めドナーツやらフルーツ、野菜サラダなど軽く食べれるものがたくさん揃っていまして、自由に食べることができます。待ち時間や、休憩時にこれを食べることが唯一の楽しみといった状況でした。
録音の担当は前作UCと同じJUST CAUSE社にお願いしています。特に海外のアクターさんを使っての仕事に強く、バイオハザード5の録音やモーションキャプチャーなどでの輝かしい実績もあり、カプコンと同じ、もの作りに対して熱いハートを持つ会社です。JUST CAUSEさんなら今回の高い目標に答えられるのではないかと確信していました。
今回の録音のコンセプトは“臨場感”です。
前作UCで一つ気づいたことがあります。UCのようなゲーム形式にボイスによる緊迫感の出し方は非常に効果的なのです。UCもダークロもカメラは自動で進んでいくので、それにあわせドラマがある会話をしこんでいけます。自由に動けないぶん、演出に凝れるという点です。
そんなわけで今回のボイスに対するハードルは非常に高く設定しました。
一言で臨場感があるボイスといってもそう簡単にはいきません。
まず日本語での台本でも自然な会話、臨場感がある会話を目指して試行錯誤が続きました。
そしてそれを的確に翻訳するという難しい作業があります。ここで訳することができず、まったく変わってしまうセリフもでてきます。
例えば日本語で「虫けら!」というセリフが出てくるのですが、これが英語ではいい言葉がないのですね。この「虫けら!」という言葉はシナリオ上、かなり重要な使い方をされます。適当には訳せないのです。ここは悩んだ末「rat!」“ネズミ”という表現に訳してみました。
できあがった英語台本を元に録音するわけですが、ここが一番集中しなければならないところです。
どうしても台本を読むことに声優さんが気を取られてしまい、臨場感=リアリティなセリフになりにくいのです。始めのほうの録音はあまりうまくいかず、次の録音で録り直すことになってしましました。
しかしトライ&エラーを繰り返していくうちに、スタジオの録音監督・スタッフの理解も深まっていきます。
台本自体に読むときのテンションの指示を入れることや、なるべく状況を想像しやすい映像を用意することなどで、一つ一つ問題を解決していきました。
こうやって吐息や声の乱れも、組み込んだ緊張感あるボイスが完成したのです。
こんな経緯を経て、やっと完成したダークロのボイス、一味違うクオリティになっていますので、ぜひ聞いてみてください。惹きこまれること必至です。
■瀬戸康洋プロフィール
最近飼っているエアプランツが次々死亡中。チランジア系のエアプランツと食虫植物が好きで家に置いてます。当然バイオで好きなモンスターはイビー♡です。ウルトラマンのグリーンモンスとかオードリー(芸人に非ず)もいいですね。
2009.08.07

