DASH1の企画が練られ始めた頃、僕はバイオハザードのチームにいて、
ちょうど次のバイオ2の制作もスタートし、みんなノリまくっていたところでした。
そんなとき河野さんにDASHの企画書やイメージイラストなどを見せられ
意見を求められたんですが、「こりゃあ楽しくなりそうですね、僕がやりたい
くらいですよ!」と言ったところあっという間に稲船さんにまで
その話がいき、呼び出され、「バイオとロックマンどっちがやりたいのか?」と。
「両方やらせてください」「あほか」、というわけで悩みに悩んでロックマンを
選びました。どちらも同じくらいやりたいのなら続編よりも新規のタイトルのほうが
いいと考えて。バイオのディレクターの三上さんも、作りたいゲームを作らせて
もらえない辛い時代を経てきた人なので、困った顔をしながらも
「思うようにやればいい」と送り出してくれました。ありがたいことです。
開発が本格的に開始した当初、なんと僕がボーンメカを、もう一人のデザイナーの
伊藤君がリーバードをデザインしていました。それはすぐに逆になりましたが、
お互いに得意なところにおさまって良かったと思います。
ちなみにその頃のデザインは当時発売された設定資料集に載ってますよ。
DASH1のグラフィックは今では恥ずかしくてなかなか見る勇気が出ません。
当時としては、初期のPSのゲームによくあったような無機質でぬるっとした
グラデーションのグラフィックが好きになれなくて、
いわゆるアニメ的な、カラッと平面的な映像を目指して画面を作ったんですが、
全然理想に届かずかえって荒さばかりが目立つ結果になってしまいました。
外からも内からも散々に言われました。で、DASH2では雑誌等でも見劣りしないよう
静止画のクオリティをアップさせることが命題となり、しかし使えるポリゴン数は
そんなに変わらないので、ひとつのオブジェクトに多くのポリゴンを使い、
代わりに一度に登場する数を減らす方法をとりました。背景も、あまり遠くまで
映らない地形にして近景をゴージャスにできるよう工夫しています。
嫌だったグーロシェーディング(ぬるっとしたグラデーションのあれですね)も
導入せざるを得なくなったのですが、単純に黒い影をオートで落とすのではなく
手作業でポリゴン頂点ひとつひとつの掛かり方を調整して、色もテクスチャーに
合わせるなどしてなんとか温かみを持たせようとしました。
モーションも、アニメの原画や動画を一枚ずつ描くように、ほとんど1フレーム単位と
いっていいくらいのレベルで組み立てています。
絵的な部分だけ取っても涙ぐましい仕事の結晶であるロックマンDASHですが、
正直言って当時はまさにロックマン冬の時代。プレイしていない方からは
またロックマンかよと敬遠され、昔からのロックマンファンの方からは
こんなのロックマンじゃないと否定され(無理もない)、さらに小さな子たちには
大人が恥ずかしくないようにと考えられたパッケージ(1の)がロックマンで
あることに気づいてもらえず。
不憫なDASH。まるでロックヴォルナットそのものです。
あのままバイオチームにいればボーナスいっぱい貰えただろうなあと
ぼんやり考えることもないこともないのですが(河野さんと呑むたびに謝られます)、
別にそれは悔しくはなくて、自分にとって作ってて楽しかったのは
だんぜんDASHなのです。スタッフが楽しんで作っている雰囲気が
ゲームに出てて微笑ましいなと今でも思いますよ。
・・・いや、ボーナスなんか要らないと言ってるのではなく、むしろそこそこ要るんですが、
いいゲームを楽しく作ってそれがちゃんと売れることが大事なんですよね。
僕が入社した頃、ロックマンを3Dで動かす研究がされていました。僕自身、3Dの
ゲームの開発がしたくて入社したので、研修後、紆余曲折を経て某3Dゲームの
チームに配属された時にはとても嬉しかったものです。(当時、カプコンからは
3Dゲームが発売されておらず、バイオハザードが発売される直前でした。)
このタイトルは諸般の事情で開発が中止となったんですが、その技術を活かして
新しい別のゲームを作ろうと言う話になり、「ロックマンNEO」(ロックマンDASHの
前身)の企画が上がってきたわけです。
その後、某3Dゲームのスタッフは「ロックマンNEO」チームと、同時期に立ち上がった
「ロックマンバトル&チェイス」チームに組み込まることとなり、僕はバトル&
チェイスの開発に参加しました。ちなみに、ロックマンシリーズ初の3Dゲームは
このバトル&チェイスだったりします。レースゲームにロックマンならではの要素を
盛り込んで面白おかしく仕上げたんですが、開発中にN64のマリ○カートが発表されて
いろんな意味で悶絶したのを覚えています。これはこれで好き放題作らせてもらったし、
かなりぶっ飛んだ内容になってるので、こっそりオススメしておきます。
バトル&チェイスの後、DASH、DASH2、そして鬼武者シリーズと携わってきました。
DASH2でイベントやリーバードの様々なエフェクトを作ったことがキッカケで、
鬼武者シリーズでは、ほぼ全てのエフェクトを手がけることになりました。
最初に携わった某3Dゲームは世に出ることなく消えて行ったわけですが、その開発
技術は後のDASHシリーズの土台として活かされています。またDASHシリーズのノウ
ハウは、バイオハザードシリーズのそれと融合して、鬼武者シリーズにも活かされて
いるわけです。DASHシリーズの雰囲気やテイストは、エグゼシリーズに継承されて
いたりしますね。こうして考えると、カプコンのタイトルのいくつかは、親子や
兄弟のような関係にあるのだなと実感します。
今まで累計ですごい数のメールをいただいてきました。もちろん全て目を通し、
すべて保存しています。DASH後も色々ゲームを作ってきましたが、
苦しい時も悲しい時もみなさんのメールが私を勇気付けてくれました。
本当に心苦しいのは、中々みなさんのお声に答える事ができないこと…
でも希望は捨ててませんよ。そういえば、DASHのプロデューサーだった
稲船さんのお子さんが最近DASHをやってくれているそうです
「むっちゃおもしろい!って言ってくれるねん」と嬉しそうに語ってくれました。
昔のスタッフ達も…当時喧嘩もしましたが…また作りたいと言ってくれています。
いつかきっと…なんらかの形で続きを作ることができたらいいな…いや作るぞ!!
(すいません…あくまで私個人の決意でございます…まだ社長に言ってません)
みなさん…これからも応援よろしくお願い致しますー
熱いメッセージが山ほど届きました。なんとこれまでの最多記録だそうで、
DASHファンのみなさまの変わらぬ情熱とパワーに感激しきりです。
ていうか熱いメールはいまだにDASHまわり(公式サイト)の
DASHチーム宛メールアドレスに毎日のように届いてるんで、
実は毎日感激です。あのアドレス、カプコンHPのあまりに奥深くにあるためか
スパムメールの対象になることもなくひっそり平和に鎮座してます。
エグゼのほうは大変ですが!
種田君も言ってるようにメールはちゃんと元DASHチームのメンバーに
届いていますので、これからもバンバン送りつけてやってくださいね。
DASHまわりも、いつか更新しようと隙を見てはチビチビと
ネタを仕込んでいます。何ヶ月後か何年後か分かりませんが、
あんまり量はないかもしれませんが、お楽しみに。
ロックマンバトル&チェイス。ロックマンDASH。ロックマンDASH2。
鬼武者。鬼武者2。鬼武者3。10年間で7つのタイトルに携わりました。
知名度や売れ行きでは鬼武者シリーズが圧倒的に上ではありますが、
「代表作は何ですか?」と聞かれれば「ロックマンDASHシリーズと
鬼武者シリーズです!」と答えます。(…バトル&チェイスは?)
多くのファンのみなさんがDASHシリーズをリスペクトしてくれていることを
誇りに思っています。またDASHシリーズの制作で積み重ねた経験は、
鬼武者シリーズでも活かされ、僕自身のスキルの土台となっています。
遊び手にも作り手にも愛されるようなゲーム。そんなゲームをこれからも
作って行きたいです。ひょっとしたら、こうしてメッセージを送ってくれた方々の中に、
将来僕たちとゲームを作っていく仲間がいるかも知れませんね。それも楽しみです。
その時には、是非「ロックマンDASH3」を……と夢見つつ。夢は寝て見るものでは
なく、努力して叶えるものでありたいですね。