セリフと言ってもわたしの担当は範囲が広く、各キャラクターの汎用セリフはもちろんですが、大筋しか決まっていないシナリオを完成させたり、ステージにセリフを仕込んだりと、さまざまです。
しかし、何を差し置いても本当に大変だったのは、登場人物達に、生きた人間としてのキャラクター性を注ぎ込むことでした。
とある雑誌のコラムでも記したのですが、いざセリフを書き始める際、ディレクターの山本さんは実に簡素なキーワードしか発してくれません。「覇王」「秀吉の友達」「正義のヒーロー」「やられ役」「アニキ」。…いえ、キーワードがない場合もあります。
山本「岡村さん、お市なんですけどね」
岡村「はい」
山本「イヤー、僕はミニスカートにしたいんですよ!」
岡村「パワーがミナギってますね。性格はどうしましょうか?」
山本「どうしましょう?」
岡村「ボソボソ喋りの自虐的な女性にしたいのですが」
山本「いいですね。ではそれで!」
岡村「こ、こころえました……」
このような1ビット状態から一人の人間を形成する…何ともセツナイお話です。
今回、キャラクターを作る中で最も苦労したのは片倉小十郎です。プロデューサーの小林さんやディレクターは、彼に関しては「あまり苦労しなかった」とのことですが、実は、小十郎はわたし個人の中で人物像が明確になるまで、非常に時間がかかりました。
「何故こんな性格になったのか」がしっかりしていれば、キャラクター達を生き生きと喋らせることができます。(これがバサラのキャラクター達の愛すべき人間くささなのではないかと思います。)しかし、他キャラの製作がどんどん進む中、小十郎だけが頑として口を開いてくれませんでした。ディレクターは例によってたった一言、「政宗のカッコイイ兄貴分」。山本さんめ!
それにしても、タダの兄貴分ではありません。「政宗の」兄貴分です。どうしよう。どんな言葉遣いなのか? 政宗に対してどう思っているのか?何に腹を立て、何に喜び、何に泣くのか?方向性は決めていたものの、人としての重さの部分が見えず、締め切りが迫っても声すら想像できませんでした。
ディレクター差し入れのお雑煮を食べながら悩んでいたある日のこと、ふと一枚のイラストを目にしました。土林さんの描いた、躍動的な小十郎のイラストです。これを見た瞬間、小十郎が堰を切るように喋り出したのです。驚きました。小十郎はこの一枚のイラストから生まれたと言っても過言ではありません。
さて、どんな小十郎になったのか。人気投票の小十郎の順位を見て、よかったと涙しているのは、弊社でおそらくわたし一人です。
その他にも…
★春日山の松茸は謙信が育てていたが、ボツになった
かすがのボツセリフ「松茸を育てているあの方の横顔…お前なんかに、その良さは分からない!」
★半兵衛の一人称「僕」はさんざん反対されたが、酒の席で酔っ払っているディレクターからOKをモギ取った
★信長との決戦を前にして、お館様が無意識にオヤジギャグを言っていた
★アニキ親衛隊をどうしてもやりたくて、コッソリ書いた
★京都花街組の町人の名前は、たまたま前日に時代劇を見ていて思いついた
★半兵衛のセリフは、独特のリズムを出すための工夫が施されている
★いつきストーリーの伊達はなぜ優しかったのか?
★毛利ストーリーのラストは、実に複雑な心理が隠されている
★市の「あの」セリフ
★無敵なのにやられた
など、たくさんの裏話がありますが、またの機会に。
皆さんがご希望するあのキャラの誕生秘話、セリフの製作秘話など、リクエストがありましたらお答えいたしますね。それでは、ごきげんよう。
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